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|---|---|
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日本の看護師数は、世界水準で見ても多い。OECD「Health at a Glance 2025」によれば、実働看護師数は人口1000人あたり12.2人で、OECD平均(9.2人)を上回る[1]。それでも現場の不足感は長く続いている。本号は、その輪郭を厚生労働省の最新統計から描く。
| 就業看護師数(令和6年末/2024年12月末) | 1,363,142人(男性 118,068人/女性 1,245,074人)[2] |
|---|---|
| 前回(令和4年/2022年)からの増加 | +51,455人(+3.9%、調査開始以降の最多を更新)[2] |
| 就業准看護師数 | 233,022人(前回比 −21,307人、−8.4%)[2] |
| 人口10万対看護師数 | 1,101.1人[2] |
| 就業場所 — 病院 | 895,944人(看護師全体の65.7%)[2] |
| 就業場所 — 診療所 | 194,665人(14.3%)[2] |
| 就業場所 — 訪問看護ステーション | 91,022人(6.7%)[2] |
| 就業場所 — 介護保険施設等 | 107,984人(7.9%)[2] |
| 正規雇用比率(看護師) | 81.8%(1,115,543人)[2] |
| OECD看護師密度(参考) | 12.2人/1000人口(OECD平均 9.2)[1] |
看護師は保健師助産師看護師法に基づく国家資格、准看護師は都道府県知事免許で、依然として二層構造が残る。准看護師は2014年の340,153人から2024年の233,022人へ、10年で約10万人減少した[2]。看護師(正看)への移行が進んでいる。
2022年10月から、収入を月額12,000円相当引き上げる「看護職員処遇改善評価料」が診療報酬上で導入された。処遇改善は政策の継続テーマであり、日本看護協会は毎年の「病院看護実態調査」で看護職員の賃金・夜勤実態を継続的に報告している[3]。
就業場所別では、病院が65.7%で依然として最大の受け皿だが、訪問看護ステーション勤務は91,022人(6.7%)に達し、前回(2022年)からの2年で構成比が約1.3ポイント上昇した[2]。需要は急速に在宅・介護領域へ移動している。
年齢構成は、看護師の最大ボリュームゾーンが「45〜49歳」の186,529人(13.7%)、25歳未満は112,853人(8.3%)[2]。雇用形態では、看護師の正規雇用比率は81.8%と高いが、准看護師の非正規雇用比率は31.0%(72,285人)に達し、雇用の二層化も観察できる[2]。
OECDの2025年公表データでは、日本の看護師密度(12.2/1000)は、ドイツ(12.2)と同水準、豪州(13.0)にやや及ばず、カナダ(10.0)を上回る[1]。日本のカウントには准看護師(associate professional nurses)が含まれるため、職種定義の違いから単純な比較には注意がいる。
外国人看護師の受入はEPA(経済連携協定)による枠組みに留まり、日本語による国家試験が事実上の高い障壁となっている。
就業看護師数は、2014年の1,086,779人以降、2年毎の調査で一貫して増加しており、2024年に1,363,142人で最多となっている[2]。一方で需要は在宅・介護領域へ急速に移動し、病院(65.7%)と訪問看護(6.7%)の構成比の差は依然として大きい。ストックは厚いがフローが追いついていない、という構造が読み取れる。
制度の重力は強い。地域・施設・雇用形態を変えても、同じ枠組みに戻る場面が多い。だからこそ、続ける/働き方を変える/海外という第三の選択肢も含めて、自分の位置を見渡す時間が要る。
ドイツの看護師密度は、OECDの集計で人口1000人あたり12.2人(OECD平均 9.2)と上位グループに位置する[1]。それでも独連邦雇用庁(Bundesagentur für Arbeit)は近年、看護分野を継続的に人手不足職種として報告している[2]。数が手厚いはずなのに足りない。本号は、その構造を、独連邦雇用庁の最新分析から読む。
| 看護師密度(OECD, 2025) | 12.2人/1000人口(OECD平均 9.2)[1] |
|---|---|
| 外国人看護師の比率(独BA, 2025年5月公表時点) | 看護分野の18%[2] |
| 外国人看護師の年間増加(2023年6月→2024年6月) | +27,000人(うち EEA/スイス出身は +3,000人)[2] |
| 2024年の技能移民法(Skilled Immigration Act)による新規取得 | +13,000人(居住・就労許可)[2] |
| 2024年のWestern Balkans Regulationによる増加 | +4,000人(同制度開始2015年〜累計 51,000人)[2] |
| 看護分野のパートタイム比率 | 約半数(全産業平均は約3分の1)[2] |
| 女性比率 | 82%[2] |
ドイツの最大の制度的特徴は、2020年から施行された看護師職法(Pflegeberufegesetz)による統合資格Pflegefachmann/Pflegefachfrauである。それまで一般看護師、小児看護師、高齢者介護士に分かれていた3つの教育課程が、共通のカリキュラムに統合された[3]。資格保有者は、急性期・小児・高齢者介護のいずれの現場でも働ける制度設計になっている。
EU域内では資格の自動承認制度が機能している。第三国出身者向けには、ドイツ国際協力公社(GIZ)が関与する公的な受入プログラムTriple Win Programme(2013年〜)が運営されている[4]。さらに2023年11月以降、新しい技能移民法(Skilled Immigration Act)が段階的に施行され、2024年6月に完全実施された[2]。
独連邦雇用庁の2025年5月公表分析によれば、看護分野の雇用増加は2022年・2023年・2024年と3年連続で外国人看護師のみによって牽引されている[2]。2023年6月から2024年6月の1年間で外国人看護師は27,000人増加したが、そのうちEEA/スイス出身はわずか3,000人にとどまる。雇用主は長らくEU域外からの人材確保に動いており、フィリピン・インド・西バルカン諸国が主要な供給源となっている[2]。
パートタイム比率の高さも独BAが指摘する構造的特徴だ。看護分野では約半数の従事者がパートタイム勤務で、これは全産業平均(約3分の1)より顕著に高い[2]。労働時間規制、有給休暇、家族休暇など、ドイツ労働法による標準的な保護が適用される。
看護師密度(12.2/1000)はOECD平均(9.2)を大きく上回り、日本(12.2)と同水準。ただし、ドイツ語要件(多くの州でB1〜B2レベル)が外国人にとっての実質的な参入障壁になっている[4]。
ドイツの看護師は、「見えているのに見えない職業」だ。統計上は手厚く配置されているが、需要に見合う供給を国内人材だけでは作れない構造が、独連邦雇用庁の継続的な分析にも表れている。雇用増加が3年連続で外国人のみという事実は、ドイツの看護労働市場が制度的に国際依存型に転換しつつあることを示す。
日本の看護師にとって、ドイツはドイツ語要件が最大のハードルだが、それを越えた先には公的フレーム(Triple Win等)による受入経路が存在する。短期決断より、言語学習を含む2〜3年単位の設計に向く。
カナダ保健情報研究所(CIHI)の2024年版データによれば、国際教育を受けた看護師(IEN: Internationally Educated Nurses)が、Registered Nurses(RN)労働力の13.3%を占めている。前年(2023年)の11.4%から大きく上昇した[1]。本号は、カナダの看護師労働市場の輪郭を、CIHIとGovernment of Canada Job Bankの一次データから整理する。
| RN供給総数(2024年, CIHI) | 338,871人(前年比 +5.2%)[1] |
|---|---|
| 直接ケア従事RN | 224,052人(前年比 +7,920人、+3.7%)[1] |
| IEN(外国教育看護師)比率 | 13.3%(2024年)/ 11.4%(2023年)[1] |
| 看護師密度(OECD, 2025) | 10.0人/1000人口(OECD平均 9.2)[2] |
| RN時給(Government of Canada Job Bank, 2025年11月更新) | CAD $30.00〜$54.37(全国レンジ)[3] |
| RN時給(オンタリオ州) | CAD $29.00〜$55.00[3] |
| RN時給(ブリティッシュコロンビア州) | CAD $35.00〜$57.00[3] |
| 2024年の各セクターでのRN直接ケア就業増加 | 病院 +5,290人(+5.2%)/長期ケア +824人(+7.2%)[1] |
カナダの看護師制度は州・準州ごとに分権化されている。登録・規制は各州の規制機関(College of Nurses 等)が行う。RN登録要件には、北米共通のNCLEX-RN試験の合格が含まれる[4]。職業分類は連邦のNOC(National Occupational Classification)でNOC 31301に該当する[3]。
連邦の永住権申請システムExpress Entryでは、医療職を含む特定職種を対象としたCategory-Based Selectionの運用が行われている[5]。賃金・夜勤手当・休暇等の労働条件は、州ごとに看護師組合と雇用者の間で結ばれるcollective agreement(団体協約)で定められる。州間で水準が異なり、上記時給レンジもBC州が最高水準にある[3]。
2024年に直接ケアに従事するRNは7,920人増加し、その内訳は病院+5,290人、長期ケア+824人、コミュニティヘルス+88人、その他(民間ナーシングエージェンシー、自営含む)+1,077人だった[1]。労働力の構成変化が継続している。
IENの統合は、看護師不足対策の中核と位置づけられている。CIHIの集計では、新たにライセンスを取得した看護師に占めるIENの比率は、2017年の平均8%から2022年に12%へと有意に上昇し、2022年には5,000人以上のIENが新規登録した[6]。地域差も大きく、2022年のオンタリオ州では新規ライセンス取得者の22%、ノバスコシア州では19%がIENだった[6]。労働力全体(ストック)に占めるRN IEN比率も、2023年の11.4%から2024年に13.3%へ上昇している[1]。NCLEX-RNは受験者の出身国・出身校により合格率に差があることが知られており、臨床経験が試験合格を保証するわけではない[4]。
看護師密度はOECDの集計で10.0/1000(OECD平均 9.2)と平均をやや上回るのみで、日本(12.2)やドイツ(12.2)に比べて低い[2]。一方、外国教育を受けた看護師の比率(13.3%)は近年急速に上昇しており、制度設計が国際採用を前提に振れていることを示している[1]。
制度設計は、外国の看護師を呼び込む方向に明確に振れている。一方、扉が開いていることと、扉を通れることは別だ。州ライセンスの個別関門、NCLEX-RNの試験設計、生活・家族コストの三つが、現実の参入難度を構成する。
日本の看護師にとって、カナダは「英語+NCLEX」という二段階の準備を超えた先に、北米基準の賃金と組合保護がある選択肢として位置する。短期の決断より、複数年単位の設計に向く。
オーストラリアの看護師制度を支える特徴は三つある。Award rate(法定の賃金水準)、Nurse-to-patient ratio(看護師配置比率の州法による規制)、そして移民制度における看護師の継続的な需要だ。本号はこの三本柱を、Fair Work CommissionとAustralian Government Department of Healthの一次資料に基づいて読み解く。
| 看護師・助産師登録者数 | 約450,000人(豪政府保健省, 全国最大の臨床職)[1] |
|---|---|
| 看護師密度(OECD, 2025) | 13.0人/1000人口(OECD平均 9.2)[2] |
| Aged Care従事RN award最低時給 — Level 1 Pay point 1(2025年3月発効) | AUD $35.41/時[3] |
| Aged Care従事RN award最低時給 — Level 2 上限(2025年3月発効) | AUD $45.96/時[3] |
| Aged Care従事RN award最低時給 — Level 3 上限(2025年3月発効) | AUD $48.12/時[3] |
| Aged Care従事RN award最低時給 — Level 5 Grade 1(2025年3月発効) | AUD $63.48/時[3] |
| Aged Care従事EN award時給(2025年3月発効) | AUD $34.25/時(単一水準に統合)[3] |
| 標準労働時間 | 週38時間[3] |
| 追加引き上げ予定 | 2026年8月(Aged Care Work Value Case 第3段階)[3] |
登録は全国一元化されたAHPRA(Australian Health Practitioner Regulation Agency)/NMBA(Nursing and Midwifery Board of Australia)が管轄する。州ごとの個別ライセンスではなく、一度の登録で全国で就業可能だ[1]。
賃金は連邦のFair Work Commissionが定めるNurses Award 2020(MA000034)が基準となる[3]。これは民間部門の看護師に法的拘束力を持って適用される全国最低水準であり、市場相場はその上で形成される。州・準州ごとの公立医療機関では別途、州の公的賃金協定(Enterprise Agreement)が上乗せされる構造になっている。
Nurses Awardのなかでも、Aged Care(高齢者介護)で働くRN・ENには専用の賃金体系(Clause 15.3)が適用される。一般病院や民間ケア施設のRN(Clause 15.1)とは別枠であり、上記の数字($35.41等)はAged Care従事看護師向けの2025年3月発効分である[3]。一般RNの賃金は別途、Pay Guideで継続的に公表されている。
Fair Work CommissionのAged Care Work Value Case(2024年12月決定、Determination PR782723)により、Aged Care従事看護師の賃金は2025年3月・10月、2026年8月の三段階で段階的に引き上げられる[3]。上記の時給は第1段階(2025年3月発効)の数値で、以降さらに上昇する。これは長年「過小評価されてきた高齢者介護の労働価値」を是正する国家的判断として実施されている[3]。
もう一つの制度的特徴が、看護師配置比率の州法による規制だ。ヴィクトリア州の Safe Patient Care (Nurse to Patient and Midwife to Patient Ratios) Act 2015が代表例で、病棟ごとに看護師1人あたりの患者数上限を州法で規制している[4]。
年金(superannuation)、有給休暇、家族休暇、シフト手当が法定化されており、専門職としての標準的な労働者保護が適用される。Nurses Award 2020はRN・EN・NP(Nurse Practitioner)について経験・職位別の最低時給を明文化しており、改定の都度Fair Work Ombudsmanが公式Pay Guideとして公表する[3]。
国際看護師は、AHPRAのOutcome-Based Assessment (OBA)経路、または橋渡し教育(bridging program)を経て登録する[1]。RNは、オーストラリアの技能職リスト(2024年末以降のCore Skills Occupation List等)に継続的に掲載されており、技術独立移民ビザの対象職種である[5]。
看護師密度(13.0/1000)はOECD平均(9.2)を大きく上回り、日本(12.2)・ドイツ(12.2)・カナダ(10.0)よりも高い[2]。award制度に支えられた明文化された賃金水準と、配置比率規制によって看護師あたりの患者数が制度的に抑えられている点が、構造的な特徴だ。
オーストラリアは、看護師という職業を「キャリアとして長く続ける」前提で設計された制度を持つ。賃金・休暇・配置比率の三点で、専門職としての保護が制度に組み込まれている。Aged Care Work Value Caseのような大規模な賃金引き上げ判断が、Fair Work Commissionという独立機関を通じて行われる仕組みは、医療政策の透明性を保つ装置として機能している。
日本の看護師にとっての現実的な障壁は、英語要件と移住の初期コストだ。試験・登録・ビザ・住居の立ち上げに、まとまった資金と時間を要する(具体額は家族構成・州により大きく異なる)。一方、ひとたび登録に到達すれば、その後の収入と労働環境の安定は、制度上の保護が明文で守られている。短期の選択ではなく、5〜10年単位の選択肢として位置づけたい。